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執筆者の写真今鶴 孝

改善基準告示はなぜ改正されたのか?②

更新日:6月22日

前回の「改善基準告示はなぜ改正されたのか?①」

で、労働基準法には「労働時間」「休憩時間」が定められており、改善基準告示には「拘束時間」「休息期間」「運転時間」が定められていることをお話しました。


なぜこのように自動車運転者について「労働時間」「休憩時間」のほかに「拘束時間」「休息期間」「運転時間」を定める必要があったのでしょうか。


自動車運転業務、特にトラック運送業には「荷待ち時間」が多いという業務の特殊性があります。


トラック運送業やドライバー側は時間短縮を目指していますが、荷積み、荷下ろしの施設等の制約のための順番待ち等で、どうしても「荷待ち時間」が発生してしまうことが多く、これがドライバーの長時間拘束が生じる原因となっています。荷待ち時間が1か所で2時間を超えることも珍しくなく、3か所でそれぞれ2時間の荷待ちをすれば、荷待ち時間の合計は6時間にのぼります。この場合、運転時間や荷積み荷下ろし等の作業時間が8時間であれば、1時間の休憩時間とあわせると、拘束時間は6時間+8時間+1時間=15時間になってしまいます。

1日は24時間と決まっていますので、長時間拘束はそのまま、睡眠時間を短縮してしまうことになるのです。


自動車運転業務にとって、最上の価値観は「安全運行」です。これはどなたも疑いのないことでしょう。

睡眠不足やそこからくる過労は集中力を失わせたり、運転動作に誤りや遅れを生じたり、運転中に突然の体調の変化を生じさせることがあります。これは「安全運行」を最上の価値とする自動車運転業務にとっては問題です。


そこで、タクシー/ハイヤー/トラック/バスの運行事業者に対して、労働基準法には定めのない「拘束時間」「休息期間」を改善基準告示で規制することとしました。


「休息期間」は、勤務終了から次の勤務開始までのインターバルの時間です。

この時間に通勤、食事、入浴、家事育児、睡眠をとりますので

「拘束時間」の上限を規制するとともに、「休息期間」の下限を設定しています。


「拘束時間」と「休息期間」をあらわしたモデルがありますので、確認してみてください。


「拘束時間」については、通達で以下のような説明があります。

拘束時間とは、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む。以下同じ。) の合計時間、すなわち、始業時刻から終業時刻までの使用者に拘束さ れる全ての時間をいうものであること。また、拘束時間の範囲内で あっても、法定労働時間を超えて又は休日に労働させる場合には、時 間外・休日労働協定の締結・届出が必要であることはいうまでもない こと。

「休息期間」は以下のように説明されています。

休息期間とは、使用者の拘束を受けない期間であること。勤務と次 の勤務との間にあって、休息期間の直前の拘束時間における疲労の回 復を図るとともに、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、その処 分が労働者の全く自由な判断に委ねられる時間であり、休憩時間や仮 眠時間等とは本質的に異なる性格を有するものであること。

また、長時間の運転は疲労のもとになりますので、同様に「連続運転時間」「平均運転時間」等の「運転時間」を定めることになったのです。



 

弊所は主に、建設業、トラック運送業、介護福祉事業、IT事業等の社会基盤となる事業の人事労務支援を行っている社会保険労務士事務所です。

業務遂行には様々なツールを使って生産性の向上に努めていますが、電子申請・DX・AIと、経営環境の変化をお感じの企業様もどうぞお気軽にご相談ください。


今鶴実践社労士事務所




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