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改善基準告示はなぜ改正されたのか?③

更新日:6月20日

改善基準告示はなぜ改正されたのか?③

前回の「改善基準告示はなぜ改正されたのか?②」

で、自動車運転業務にはその業務の特殊性から、労働基準法で定める「労働時間」「休息時間」とは別に「拘束時間」「休息期間」を定める必要があった、ということをお話しました。「荷待ち時間」が多いために睡眠時間等を確保する必要があった、ということでした。


改善基準告示の「生い立ち」を振り返ってみると、昭和42年2月9日基発第139号「自動車運転者の労働時間等の改善基準」にさかのぼります。(「29通達」といいます。)

この頃、交通戦争と呼ばれるほど交通事故が激増していました。昭和45年に交通事故死者数が史上最悪の16,765人を数えることとなります(令和5年版交通安全白書)。29通達と呼ばれる「通達」による監督指導はこんな時代背景をもとに始まりました。


改善基準告示の変遷

「29通達」では、現在のような「拘束時間」「休息期間」「運転時間」の規制はなく、「実作業時間」を規制するものでした。実作業時間の上限を1週48時間、1日11時間、所定の実作業時間を超える実作業時間は1日2時間と定めていました。


「29通達」から10年と少し。日本は未批准ですが、昭和54年6月27日、ILOによって「路面運送における労働時間及び休息期間に関する条約(第153号)」が採択されました。この第6条第1項で「最大総運転時間(超過勤務を含む。)は、1日について9時間、1週間について48時間を超えてはならない。」と規定されました。同条第2項で「1に規定する総運転時間は、各国の権限のある機関によって決定される数の日又は週にわたる平均として計算することができる。」ともされています。また、第8条第2項では「1日当たりの休息は、各国の権限のある機関によつて決定される期間にわたる平均として計算することができる。ただし、1日当たりの休息は、いかなる場合においても8時間を下回つてはならず、かつ、1週間に2回以上8時間に短縮されてはならない。」とも規定されました。このILO第153号条約を参考に昭和54年12月27日基発第642号「自動車運転者の労働時間等の改善基準」が策定されました。この「27通達」で初めて「拘束時間」「休息期間」「運転時間」という制限が生まれたことになります。(分割休息についてILO第153号条約の第7条第2項なども参照してください。)


次回に続きます


 

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