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請負と派遣の境界線

更新日:6月24日

請負と派遣の境界線

1⃣請負と派遣で問題になりやすい業種

請負=悪ということではありません。実態は派遣なのに請負を偽装することが問題です。


1.システム・エンジニアリング・サービス(SES事業)について

コンピュータシステムやソフトウェアを設計・開発・構築するサービスのことです。

情報システムの企画・設計・開発・運用を包括的に支援するサービスで、システムの要件定義から設計・開発・テスト・運用・保守までを請け負うサービスを指します。

情報システムを企画・設計・開発・構築・運用するための幅広い知識と技術力を有する専門家によって提供されるサービスですが、SES事業というと、こういった専門家を発注先に常駐させて、情報システムのライフサイクル全般をカバーするサービスを指すことが多いです。


2.携帯ショップ店員について

携帯電話や周辺機器を販売する店舗に勤務して、来店した顧客の接客や問い合わせに応じる仕事です。携帯電話に関する利用客からのあらゆる相談に応じる中で、固定客の獲得を目指します。

携帯電話に関する相談内容はさまざまで、老若男女問わず多くの人が訪れるため、高い接客スキルが求められる職業です。

代理店雇用や派遣会社から代理店へ労働者派遣される場合もあります。


3.SES、携帯ショップ店員の問題点とは

請負契約による事業を行いつつも、実態は労働者派遣に近い状態である場合が多いようです。37号告示と呼ばれる厚生労働省の告示に定める、請負事業とされる要件を全て満たす必要があり、要件を満たさない場合は労働者派遣と見なされ、派遣法違反となります。


2⃣派遣事業と請負事業の区分の必要性

なぜ、派遣だ請負だと区別することが必要なのか。

派遣事業には、派遣元と派遣先という取引関係があります。

請負事業には、雇用主と注文主という取引関係があります。

派遣事業と請負事業とでは、安全管理、労働時間管理に関して負うべき責任が異なっています。


3⃣派遣・請負、それぞれの責任

1.派遣事業の場合

派遣元は労働者の雇用に関する責任を負います。雇用に関する責任というのは

  • 給与に関すること(昇給や賞与や退職金に関することなど)

  • 年次有給休暇に関すること(育児休業休暇や介護休暇に関することなど)

  • 退職に関すること(定年など)

  • 懲戒に関すること

  • 雇い入れ時の安全衛生教育

  • 災害補償に関すること

などがあげられます。

労働者の日々の業務に関しては派遣先が管理責任を持ちます。

  • 労働時間、休憩、休日、時間外労働の指示(何時から何時間働いて、何時から休憩するか)

  • 危険有害業務に就いた時の安全衛生教育

  • 有害業務の健康診断

  • 危険防止のための措置

  • ハラスメント防止

以上のように、派遣事業の場合、派遣先と派遣元が責任を分担し合います。


2.請負事業の場合

請負事業者が労働者の雇用および日々の業務に関する全責任を負います。


3.派遣事業と請負事業の責任の比較

注文者は請負事業者の労働者に対して何の責任もありません。何の責任もない注文者からちょいちょい労働者に直接指示命令がいくと、労働者も混乱します。

注文者からの指示命令で労働者が被災したりすると、だれが責任をとるのか、やっかいな問題になります。


4.派遣事業と請負事業の区分の必要性

責任の所在が異なってくるので、派遣事業か請負事業かを明確に区分して、それに応じた安全管理や労働時間管理の適正化を図ることが必要です。

繰り返しになりますが、派遣事業が良くて、請負事業が悪い、ということではありません。


4⃣昭和61年4月17日労働省告示第37号(いわゆる37号告示)について


派遣事業と請負事業の区分基準の具体化、明確化を行いました。

請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主であっても、当該事業主が当該業務の処理に関し次の1及び2のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする。

⇒全部該当していれば、請負です。非該当項目がひとつでもあれば、派遣になります。


1.次の①、②及び③のいずれにも該当することにより自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。


①次のいずれにも該当することにより業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。


  • 労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと。

当該要件の判断は、当該労働者に対する仕事の割り付け、順序、緩急の調整等につき、当該事業主が自ら行うものであるか否かを総合的に勘案して行う。 「総合的に勘案して行う」とは、これらのうちいずれかの事項を事業主が自ら行わない場合であっても、これについて特段の合理的な理由が認められる場合は、直ちに当該要件に該当しないとは判断しない(以下同様)という趣旨である。(厚労省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」より)
  • 労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと。

当該要件の判断は、当該労働者の業務の遂行に関する技術的な指導、勤惰点検、出来高査定等につき、当該事業主が自ら行うものであるか否かを総合的に勘案して行う。(厚労省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」より)

②次のいずれにも該当することにより労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。


  • 労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと。

当該要件の判断は、受託業務の実施日時(始業及び終業の時刻、休憩時間、休日等)について、事前に事業主が注文主と打ち合わせているか、業務中は注文主から直接指示を受けることのないよう書面が作成されているか、それに基づいて事業主側の責任者を通じて具体的に指示が行われているか、事業主自らが業務時間の実績把握を行っているか否かを総合的に勘案して行う。(厚労省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」より)
  • 労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。)を自ら行うこと。

当該要件の判断は、労働者の時間外、休日労働は事業主側の責任者が業務の進捗状況等をみて自ら決定しているか、業務量の増減がある場合には事前に注文主から連絡を受ける体制としているか否かを総合的に勘案して行う。(厚労省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」より)

③次のいずれにも該当することにより企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること。


  • 労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと。

当該要件の判断は、当該労働者に係る事業所への入退場に関する規律、服装、職場秩序の保持、風紀維持のための規律等の決定、管理につき、当該事業主が自ら行うものであるか否かを総合的に勘案して行う。 なお、安全衛生、機密の保持等を目的とする等の合理的な理由に基づいて相手方が労働者の服務上の規律に関与することがあっても、直ちに当該要件に該当しないと判断されるものではない。(厚労省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」より)
  • 労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと。

当該要件の判断は、当該労働者に係る勤務場所、直接指揮命令する者等の決定及び変更につき、当該事業主が自ら行うものであるか否かを総合的に勘案して行う。(厚労省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」より)
なお、勤務場所については、当該業務の性格上、実際に就業することとなる場所が移動すること等により、個々具体的な現実の勤務場所を当該事業主が決定又は変更できない場合は当該業務の性格に応じて合理的な範囲でこれが特定されれば足りるものである。(厚労省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」より)

2.次のいずれにも該当することにより請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。


  • 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。

当該要件の判断に当たり、資金についての調達、支弁の方法は特に問わないが、事業運転資金等はすべて自らの責任で調達し、かつ、支弁していることが必要である。(厚労省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」より)
  • 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。


  • 次のいずれかに該当するものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと ・自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。 ・自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。


3.1及び2のいずれにも該当する事業主であっても、それが法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであって、その事業の真の目的が法第2条第1号に規定する労働者派遣を業として行うことにあるときは、労働者派遣事業を行う事業主であることを免れることができない。


5⃣派遣と請負の区分基準に関する自主点検表

東京労働局作成


6⃣無許可無許可派遣の罰則

1年以下の懲役又は 100万円以下の罰金(派遣法第59条1項2号)

事業所名の公表(違反事項が是正されるまで:厚生労働省、都道府県労働局HP)


7⃣労働契約申込みみなし制度

労働契約申込みみなし制度とは、派遣先等により違法派遣が行われた時点で、派遣先等が派遣労働者に対して、その派遣労働者の雇用主(派遣元事業主等)との労働条件と同じ内容の労働契約を申し込んだとみなす制度です。

なお、派遣先等が違法派遣に該当することを知らず、 かつ、知らなかったことに過失がなかったときは、適用されません。

派遣先等が労働契約の申込みをしたものとみなされた場合、みなされた日から1年以内に派遣労働者がこの申込みに対して承諾する旨の意思表示をすることにより、派遣労働者と派遣先等との間の労働契約が成立します。

派遣先が以下の違法派遣を受け入れた場合、その時点で、派遣先から派遣労働者に対して、その派遣労働者の派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約が申し込まれたものとみなされます。(派遣法第40条の6)


違法派遣とは

  1. 労働者派遣を禁止業務に従事させること (禁止業務⇒港湾運送、建設、警備、医療)

  2. 無許可事業主から労働者派遣の役務の提供を受けること

  3. 事業所単位の期間制限に違反して労働者派遣を受けること(事業所単位で3年超)

  4. 個人単位の期間制限に違反して労働者派遣を受けること(個人単位で3年超)

  5. いわゆる偽装請負等 (労働者派遣法の規定を免れる目的をもって請負で人材供給している)


派遣に該当する場合は、派遣業許可を取得する等の対応が必要です。

派遣業許可についてはこちらをご覧ください。

 

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